2008年06月01日

戦争映画 FALL IN!! Vol.9 「トラ・トラ・トラ!」

トラ・トラ・トラ!英タイトル: Tora!Tora!Tora!
公開年: 1970年
製作: アメリカ


1941年ハワイ時間12月7日、日本時間12月8日未明、ハワイ・オアフ島において日本軍が行った真珠湾攻撃。「太平洋戦争」の口火を切ったこの歴史的事件を日米双方の映画屋が総力を結集して作った力作。


ストーリー
12月2日、ハワイへ向け進航中の第一航空艦隊は、山本長官から(出撃指令)「ニイタカヤマノボレ」という暗号を電受した。いよいよ真珠湾攻撃の時が来た。12月7日、東郷外相は駐日大使の天皇拝謁を助け、局面打開を求めたが、道はすでにふさがれていた。翌12月8日未明、遂に南雲中将の率いる機動部隊はオアフ島北方から真珠湾に迫り、午前7時57分、淵田少佐を先頭とする戦隊が、空から敵地へ突っこんで行った。(goo映画から加筆引用)


この映画の最大の驚きと言うか不思議は、史実に基づき日米両方の視点を平等に取り入れていることだ。

戦争映画は性質上、Vol.8でこきおろした「パール・ハーバー」のように一方の視点を軸に感情移入させる方が一般的で、結果としてプロパガンダ映画ができあがることが多い。

ところが、「トラ・トラ・トラ!」は、アメリカの20世紀フォックスが制作したにもかかわらず、攻撃側の日本の心情まで丁寧に描いている。むしろアメリカ軍の呑気具合を強調させすぎではないかと思うほどだ。

主に日本側の脚本を書いたのが黒澤明だったため、ありがちな誤った日本観にならなかったことは理由の1つだが、主導権はアメリカにあったのだから不都合な部分はいくらでも加工できたはずだ。

加えて、ベトナム戦争の真っ最中のアメリカがよくこれを作れたものだ、とまず感心する。

なお、「トラ・トラ・トラ」とは、日本軍の真珠湾攻撃成功を伝えた電文で「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する。


「トラ・トラ・トラ!」の背景
※第二次大戦に向かう世界情勢についてはVol.3参照のこと。

Japan 日本側の思惑
真珠湾攻撃を遡る1937年から日本は中国と日中戦争の状態にあったが、戦況は泥沼化していた。
さらにアメリカ、イギリス、中国、オランダのABCD包囲網により鉄や石油の輸入規制を受け、「持たざる国」日本は苦しい立場に立たされていた。
ついに「太平洋戦争」開戦前夜の1941年7月、南部仏印(今のベトナム南部とカンボジア)進駐への制裁として石油の全面輸出禁止となり、にっちもさっちも行かない状況に陥った。

そこに突きつけられたのが
アメリカ、コーデル・ハル国務長官からの最後通牒、
通称ハル・ノート


ハル・ノートは一言で要約すると
「日露戦争以降日本が手に入れた領土を全部手放しなさい」という内容。

日清、日露戦争の勝利により自らの植民地化を逃れるどころか列強の仲間入りを果たし強気でいた日本にとって、ハル・ノートは「屈辱」以外の何物でもなかった。

当然のごとくアメリカに対する敵対心が湧き上がり、作戦コマンド「ガンガンいこうぜ」と相成る。
そこで採用されたのが大西瀧治郎参謀による虎の子の戦法、真珠湾奇襲作戦であった。


USA アメリカ側の思惑
結果論で言うと、一次大戦でも二次大戦でもアメリカはカギを握る国であり、当時の外交文書においても勝つか負けるかという議論はなく、勝つのは当たり前で戦争が終わった後の世界秩序をどう構成するかが焦点であった。

「太平洋戦争」においては、その後予想される共産主義国との対立(後の冷戦)を想定し、どういう足場を築くかの二手三手先まで考えられていた。
そのためには太平洋の向こう側にも基盤を築く必要があり、日本は地理的に格好の的だった。

戦争を始めるか否かのイニシアチブを握っていたのもアメリカである。

なぜか?
当時日米戦争近しとささやかれつつも、日本が最も必要としていた石油の80%はアメリカから輸入していた。
つまり、このパイプラインを断ってしまえば、日本がやけくそになるのは明白で、ルーズベルトは他の部分は締めつけても、石油だけは最後まで切り札として手元に残していた。

そして1941年7月、日本は北部仏印(今のベトナム北部とラオス)から駒を進め、南部仏印に進駐する。南方戦線の基地を作ることが目的だったが、同時にスマトラ、ボルネオの油田地帯に一歩近づいたわけだ。

切り札はここで切られた。
アメリカは在米日本資産の凍結と石油の全面輸出禁止という経済制裁を発動した。

予想以上の反応でにっちもさっちも行かなくなった日本に
とどめの一撃、ハル・ノートが突きつけられた。


アメリカの「スケープゴート」戦略
と前章では、アメリカの対外戦略について語ったが、むしろ問題は国内にあった。

というのは、世界の紛争にばんばん介入する今ではどこ吹く風だが、アメリカは伝統的にモンロー主義=孤立主義を政策の要とし、風車の矢七的ポジションが基本スタンスだった。
そのため、他国と開戦するには議会と国民を納得させるそれなりの理由が必要であった。

そこで利用されたのが、「スケープゴート」としての真珠湾であった。

さて、Vol.1で前振りした「アメリカの"お家芸"」についてようやくここで説明することになるが、アメリカはスケープゴートを用意し、国民感情を戦争!に扇動することが定石である。その古今東西の実例は以下の通り。


ルシタニア号事件 第一次大戦参戦
1915年、アメリカ人乗客128人を含むイギリスの客船ルシタニア号が、ドイツ軍のUボートによって撃沈された事件。
それまで中立だったアメリカ国内で一気に「卑劣なりドイツ!」の開戦論が沸騰。結果1917年4月、ドイツの無差別潜水艦作戦再開後、遅ればせながら第一次大戦に参戦。


ルシタニア号は民間客船であったが、アメリカから連合軍へ向けての弾薬を積載していた。(国際法違反)当時、制海権巻き返しを図るドイツは無差別潜水艦作戦を宣言しており、そんな中弾薬を積んだ船がUボート出没海域を行き来するのは自殺行為に等しかった。


トンキン湾事件 ベトナム戦争本格介入
1964年、米軍の駆逐艦マドックスがベトナム、トンキン湾上で北ベトナム軍の魚雷攻撃を受けた事件。これをきっかけにジョンソン大統領は"報復攻撃"を決定。

そもそも、そんな事実はなかった。
アメリカによる全くの自作自演であり、北爆開始の口実であったことが関係者によって暴露されている。



911同時多発テロ イラク戦争
2000年9月11日に起きたWorld Trade Centerを始め、アメリカで起きた一連のテロ事件。
ブッシュ大統領は「対テロリズム」を標榜し、イラクは「アルカイダと関係が深い」(自分たちこそね)、「大量破壊兵器を保有している」(自分たちこそね。しかも結局なかった)と主張し、対イラク参戦。


BBC報道で加熱したが、911は完全な自作自演だったという説がある。
その指摘として、
「ビルの崩落が速すぎで、あれは飛行機の追突ではなく爆破によるものでは?」
「位置的に何の影響もないはずのWTC第7ビルが崩落したのはなぜ?」
「ペンタゴンの破壊痕はジャンボが墜落したにしては小さすぎない?」
など。


※反米帝色の濃いメディアからの発信が多いので眉唾だが、1979年のソ連アフガン侵攻の時、CIAがアルカイダを作った説があったり、ビン・ラディン一族とブッシュ一族が共同経営する会社があったり。長くなるのでまた別の回で。


例によって話がずれたが、「太平洋戦争」のスケープゴートとなったのが真珠湾ということだ。

「トラ・トラ・トラ!」では日本の暗号電文がだだ漏れだったことが描かれているが、実は大統領レベルまで真珠湾攻撃について筒抜けだった可能性が高く、ルーズベルト大統領は日本に先制攻撃をさせるために「知らぬ振り」をしたという陰謀説がある。

― その結果、日本の奇襲により民間人57名を含む2,345名の戦死者と超弩級戦艦アリゾナ他大量の戦力が失われた。これは日本の戦力を過小評価していたペンタゴンやホワイトハウスにとって予想を上回る大損害だった。

ただし、アメリカも想定していなかったのが、駐米大使の野村、来栖両氏が「なんならやっちゃいますよ」な宣戦布告をハル長官に手渡したのが、「もうやっちゃった」真珠湾攻撃の55分後だったという事実。

なぜそんな致命的トホホが起きたかと言えば、奇襲の日12月7日は日曜日であり、ワシントンの大使館員が同僚の葬儀で出払っていたこと、英訳タイプに手間取ったことなどがあったそうだ。

真珠湾攻撃の目的は敵の戦力に重大な打撃を与えるともに、アメリカ人の戦意を喪失させることだったが、宣戦布告の遅延により「騙し討ち」となったことで全くの裏目となった。
アメリカでの世論は沸点を超え、"Remember Pearl Harbor"の標語の元、「卑怯な"ジャップ"」への報復で意見が一致した。

REMEBER PEARL HARBOR
※戦時国債の購入を促した当時のポスター。腕には"JAP TREACHERY"=「ジャップの背徳」、ナイフには真珠湾攻撃の日付が書かれている。蛇足だが、ジャップが侮蔑語となったのは真珠湾攻撃から。

私見では、アメリカが東京大空襲やヒロシマ、ナガサキなど国際法無視の民間人大虐殺をためらわず遂行できた原点はここにあったと思う。


実写の迫力
ここからは「トラ・トラ・トラ!」の映画としてのできについて目を向けてみたい。

作られたのは38年前、当然CGなんて影も形もない時代。
つまり全てが実写であり、一部ミニチュアを使っているものの概ね本物の戦闘機や戦艦を使用している。ゆえに、ライブ感100%のスペクタクル映画に仕上がっている。

実際、鑑賞中に何度「すげー」を心の中で呟いたかわからない。

裏話を含めて1つ「すげー」を紹介すると、B-17の片輪が降りなくて胴体着陸したシーンがあるが、あれは撮影中に本当に起きた事故。
撮影スタッフは片輪が出ないという緊急報告を受けるや、着陸レーンにカメラをセットしたそうだ。
※参照リンク(英文):http://www.aerovintage.com/tora.htm


世界のクロサワ降板劇
撮影当初、日本側の監督には黒澤明がアサインされていたが、クランクイン直後に製作側と予算をめぐる見解の相違により、結局降板となった。
(代わりにメガホンを取ったのは、Vol.7で書いた『二百三高地』監督の舛田利雄と、後に『仁義なき戦い』で一世を風靡する深作欣二)

日本側の脚本も黒澤の手によるものだったが、降板後もほとんどそのまま使用された。
しかし、黒澤は「トラ・トラ・トラ!」に自分の名前がクレジットされることを好まず、結局完全なアラン・スミシーと化した。

さて、リアリティの追求という点において、個人的には今の完成度で申し分ないのだが、もしも完全主義者、黒澤明が監督を続けていたらどうなっていただろうか?
黒澤なら本気で一個連隊と一個師団をぶつけあい、本当の戦争をおっぱじめかねない。
カニカマに本当はカニが入っていなくても許せる程度の俺としては今のレベルで十分だ。


参考文献
「真珠湾燃える」 秦郁彦著 / 原書房刊




関連記事

 Vol.8 「パール・ハーバー」
 Vol.7 「二百三高地」
 Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
 Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
 Vol.4 「戦場のピアニスト」
 Vol.3 「戦争のはらわた」
 Vol.2 「炎628」
 Vol.1 「西武戦線異状なし」
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