公開年: 1980年製作: 日本
日本が作った戦争映画として近年希に見る傑作。小国日本が大国ロシアを下したため、諸外国にも多大なるインパクトを与えた日露戦争における旅順203高地争奪戦が題材。
日露戦争?いつの話だっけ?、「坂の上の雲」?コブクロの新曲?なんて方は必見。
■ ストーリー
十九世紀末。ロシアの南下政策は満州からさらに朝鮮にまで及び、朝鮮半島の支配権を目指す誕生間もない明治維新政府の意図と真っ向から衝突した。開戦か外交による妥協か、国内では激論がうずまいていた。軍事力、経済力ともに弱小な日本にとってロシアは敵にするには強大すぎた。しかし、幾度となく開かれる元老閣僚会議で、次第に開戦論がたかまっていく。(goo映画から抜粋)
本作は複数の視点が交錯する。メインは乃木、児玉を中心とした大本営と実際に戦線に立つ小賀小隊の視点。小隊長の小賀中尉はインテリで元々親露派であった。しかし、次第に敬意から侮蔑に変わるさまが実にリアルで信じられる。
燦々たる前線のさまも割と客観的に描かれているようで、最近の日本映画界には是非学んでほしい。
■ 「二百三高地」の背景
約100年前、日本は国家の威信をかけて、ロシアと戦争をした。国内ですら「引き分ければよし」と言われていた戦争になんと日本は勝利する。
国内ではそのニュースが大々的に報じられ勝利に沸いたが、実情は映画の通り物資不足の中、大量の兵力を消耗し、完全勝利とは程遠い青息吐息の「辛勝」であった。
現に、1905年終戦調停であるポーツマス講和会議において、これ以上戦争を続けられると困る日本は大きく譲歩し、「自分たちは完敗したわけではないデース」というロシアの主張にもほぼ屈する。
戦没者の数も双方とも12万人程度とほぼ同数であった。
結果、日本は樺太の一部や遼東半島の租借権を得るが、疲弊しきった国内経済を立て直すための賠償金を1円も得ることができなかった。
では、結局日露戦争で得をしたのは誰だろうか?
ポーツマス条約で権威を示したアメリカ、後に英露協商(1907年)によりイラン南部、アフガニスタンを得たイギリスも間接的には得をしたことになるが、明らかに直接的利益を享受した者としてロスチャイルド家が挙げられる。
ロスチャイルド家についてはVol.4.「戦場のピアニスト」で触れ、ロスチャイルド家が介在した事件の1つとして日露戦争を挙げた。
それはこういうカラクリ↓
開戦直後、圧倒的に不足する戦費調達のために日銀副総裁・高橋是清はアメリカ、ヨーロッパを奔走する。しかし、日本がロシアに勝てるはずがなかろうと思うように資金は集まらない。
そこに現れたのが、ロスチャイルド家の代理人、クーン・レーブ商会(※)のジェイコブ・シフであった。シフは是清と会った翌日必要額の半分500万ポンドをポンと融資する。
ロスチャイルド家の狙いは、当時ロシアで横行していたユダヤ人迫害―ポグロム(Vol.2参照)に対する牽制と最終的な帝政ロシアの崩壊(第一次大戦で成就する)。
そして戦後、日本は一切賠償金を勝ち得なかったにもかかわらず、律儀にクーン・レーブ商会に利子と一緒に返済を続けた。
シフは融資に加え日本国債を大量に購入しており、結果的にがっちりと利益を得た。
しかし、このような台所事情は日本国民のあずかり知らぬこと。
「ロシアに勝った」 ― その熱狂が自信過剰を招き、二次大戦での大敗へと繋がったとも解釈できる。
※クーン・レーブ商会は最近ライブドア事件で話題になったリーマン・ブラザーズの一部として、現在も存続している。
■ 「二百三高地」と「坂の上の雲」
映画「二百三高地」は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」とかぶる点が多い。顕著なところでは、陸軍大将・乃木希典を決断力に乏しい愚将として表現していることとか。
(乃木大将を勇敢な軍神として捉える派も未だ根強く意見が分かれる。)
なお、「坂の上の雲」は2009年秋からNHKによってドラマ化される。先日放送された予告編を観た感じでは、時間も手間もたっぷりとかけられているようで、かなり期待できそうだった。
これをして秋山兄弟ブームがまた再燃するかもしれない。
さて、ここで注意しなくてはいけないのが、司馬遼太郎の小説は多くの場合、自身も公言している通り多くのフィクションを含んでいると言うことだ。
例えば、男子大好き「竜馬がゆく」には司馬氏の創作キャラクターが大勢いる。(寝待ノ藤兵衛とか福岡お田鶴さんとか)
そもそも「龍馬」と区別するためにあえて「竜馬」を用いたのに、「竜馬がゆく」が余りに有名になりすぎたため"坂本竜馬"だと思い込んでいる人も意外と多い。
また「峠」をして、長岡の一家臣・河合継之助を世に知らしめた功績は大きいが、花街好きの色男として描いたのはやりすぎな気がする。
「坂の上の雲」もしかりで、それゆえか司馬氏は同書の映像化を望まなかったそうだ。
ドラマを観賞するに当たっても、このことは踏まえておきたい。
■ 「二百三高地」のここだよ!ここ!
・仲代:乃木 vs 丹波:児玉
2大名優の口角泡を飛ばす応酬はかなり迫力がある。2人とも目力ありすぎ。
・故・夏目雅子
今となっては夏目雅子が観られるというだけでも、この映画には大きな価値がある。映画公開の5年後、白血病のため他界。合掌。
・「防人の詩(さきもりのうた)」
個人的には泣く映画ではないのだが、暗闇の中で涙をこぼす乃木大将が火種となり、ラストの嗚咽→「防人の詩」のつなぎは来るものがある。
なお、本作181分と長いため前後半の2部構成になっている。そのため「防人の詩」もいいところで2度流される。
■ これもオススメ
「八甲田山死の彷徨」 新田次郎著
日露戦争前夜、極寒の戦線を戦うための訓練として行われた八甲田山での雪中行軍は、199名の死者を出す山岳史上最大の遭難事故となった。当時の軍部の無茶苦茶ぶりがうかがい知れる小説として面白い。山口少佐がとにかく感じ悪い。
(映画化もされているが未見のため、小説のみ紹介)
Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
Vol.4 「戦場のピアニスト」
Vol.3 「戦争のはらわた」
Vol.2 「炎628」
Vol.1 「西武戦線異状なし」
気がつきませんでした。
一行紹介で矢印の前で切って読んでしまい、
なんて自虐的な!
と思ってしまったのは内緒です。
司馬さんのところを見て思ったんですが、歴史小説、歴史映画において、ノンフィクションというジャンルはほぼあり得ないんですね。
登場人物の台詞、行動等は実際にはどうだったのかはわからない訳ですからほぼ創作なんでしょう。
後の世にわかるのは結果だけ、なんですよね。
なんてことを考えながら見るのが歴史物の楽しみ方なのかな、なんてちょっと思った今日この頃でした。
> なんて自虐的な!
> と思ってしまったのは内緒です。
おお、確かに仰るとおりなので、文中の助詞を変えてみました。
そしたらあら不思議、一文字変えるだけで全然印象がが違うわけですよ。
重ねて言うと、司馬さんの文章はフィクションです。その辺のことを予め知ったできるもん読書の方はラッキーだと思うわけです。
かしこ