2008年04月09日

戦争映画 FALL IN!! Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」

ジョニーは戦場へ行った英タイトル: Johnny Got His Gun
公開年: 1971年
製作: アメリカ


ハリウッド・テン(後述)の1人、ダルトン・トランボが自身の小説「ジョニーは銃を取った」(1939年)を映画化。
必死に「俺を助けてくれ、どうか殺してくれ」と声にならない悲痛な叫びを上げるジョーの姿は観る者に強烈な印象を残す。通称「ジョニ戦」(ウソ)。


ストーリー
愛するカリーンに別れを告げ、第一次世界大戦に出兵したジョー。しかし、戦場で爆撃を受けて負傷し、病院に搬送される。無事だったのは延髄と性器のみで、目も耳も口も鼻も失い、手足は切断されてしまう。ジョーは過去を回想しつつ、現実に絶望し、自らの死を望むのだが・・・。
(Wikipediaから修正引用)


そろそろヨーロッパ戦線を一時離脱しようかなということで、継投でVol.1同様、舞台やイデオロギーに関係なく「反戦」を明確なテーマとしている本作を選んでみた。

未見の方のために最初に言っておかねばならい。
今回の「ジョニ戦」もVol.2「炎628」と同系統、

つまりトラウマ系映画である。


グロいシーンは一切ないが、救いがない度合いだけで言うとこっちの方が上をいく。
反戦映画の代表というより欝映画の代表として有名かもしれない。

さらにどんよりさせる要素として、この話、実話を基にしている


「ジョニーは戦場へ行った」の背景

― 1998年、アカデミー賞名誉賞の授賞式。会場は異様な空気に包まれていた。

直立して祝福の拍手を送る者、
拍手はするが席は立たない者、
拍手どころか顔をしかめ腕組みする者、
三者三様であった。

受賞者の名前はエリア・カザン

アクターズ・スタジオの創設に関わった人物で、ハリウッドの発展に大きく寄与し、名誉賞の受賞に値する経歴の持ち主だった。

しかし、彼には暗い過去があった。

時は二次大戦後、冷戦モードに突入した1940年代後半。
レッド・パージ=赤狩りの嵐が西側諸国に吹き荒れ、徹底した共産主義者排斥が行われた。
その波はハリウッドにも押し寄せ、大きな影響力を持つ映画関係者の中にも共産党員がいないか調査が進められ、疑いのあるものには容赦ない圧力がかけられた。

チャップリンブレヒト(Vol.3終盤で紹介)といった大物も、レッド・パージの果てにアメリカを追われ、ヨーロッパへと渡った人物たちである。華やかなハリウッドの世界にはこんな黒歴史があったのだ。

エリア・カザンにも共産党員の疑惑がかけられた。(実際に元共産党員だった)
疑惑を晴らすため、エリア・カザンは司法取引に応じ、疑わしい人物の名前を売った。
つまり、「密告者」となったのだ。

一方、カザンとは逆に、証言を頑なに拒否した10人の映画監督・脚本家たちがいた。
彼らはハリウッド・テンと呼ばれ、言論の自由を掲げて司法の場で争うが、結局敗訴してショービジネスの世界を追われた上、刑務所送りとなった。

本作の原作・脚本・監督のダルトン・トランボは
そんなハリウッド・テンの1人であった。


しかし、トランボはめげなかった。
釈放後も偽名を使い、身分を隠して精力的に執筆活動を続ける。

1953年、トランボはイアン・マクレラン・ハンターの名を借りて「ローマの休日」を執筆した。言わずもがなではあるが、「ローマの休日」はオードリー・ヘプバーンという世界的スターを産み、今に語り継がれる大ヒット映画となって、その年のアカデミー原案賞を受賞した。

1956年には、ロバート・リッチ名義で「黒い牝牛」を執筆、こちらもアカデミー原案賞を受賞。
なお、アカデミー原案賞は1956年の「黒い牝牛」をもって廃止された。廃止の理由は明かされていないが、一説ではロバート・リッチがハリウッドを追放されたダルトン・トランボであると気づいたためだという。

その後1960年に「スパルタカス」、「栄光の脱出」でようやくハリウッド復帰を果たした。


そんなトランボの悲願が、「ジョニーは戦場へ行った」の映画化だった。

本作は小説の段階で、幾度も発禁処分となり、アメリカが戦争をする度に絶版、復刊を繰り返していた。
紆余曲折の果てに、1971年トランボ自らがメガホンを取って、小説発表から30年越しに映画として結実させた。
なお、当時アメリカはベトナム戦争の真っ最中。よく公開できたものだ。
結果として、アメリカでこそヒットしなかったものの、ヨーロッパや日本では高い評価を得る作品となった。


一言で言うと
俺的率直な感想は、
すっごい前向きな姿勢で、すっごい後ろ向きな
映画を作ったんだね、

といったところ。


ところで、実話が基である、と前述したが、モデルとなったイギリス人将校は一時大戦で被爆して四肢と耳、眼、口を失いながら15年間、闇の中を生きたのだという。
意識はあったのだろうか?ただ死を待つというのはどういうことだったのだろうか?
・・・頭が重くなってきたので、この辺にしておこう。


「ジョニ戦」の「へえ」
最後に、いくつか観賞ティップスを紹介。

本作の主人公はジョーなのにタイトルは「ジョニー」。
なぜかというと、タイトルは「ジョニーよ、銃を取れ」("Johnny, get your gun")という一時大戦時にアメリカが志願兵募集のために用いたスローガンを皮肉っているから。

知らなかったけど、IMDBをチェックしたら、キャストにダルトン・トランボの名がある。演説者(Orator)ってことだけど、そんな人いたかな?これから観る方がいたら探して教えてください。

若かりしドナルド・サザーランドが「キリスト」と呼ばれる役で出ている。
Donald Sutherland
こうして見ると息子のキーファー(ジャック・バウアーね)とそっくりだ。
Kiefer Sutherland


似ている小説
原作小説「ジョニーは銃を取った」を遡る10年前、江戸川乱歩が発表した短編小説「芋虫」は「ジョニー〜」とよく似ている。
トランボが影響された可能性は低いが、戦争で四肢と視覚、触覚を除く五感を失うという設定や、戦時中に発禁を喰らったという点が共通している。
もっとも乱歩には反戦的意図は全くなく、彼独自の屈折した世界観を表現したにすぎないらしいが。焦点も変わり果てた夫に倒錯的サディズムを抱く妻に当てられている。


無関係リンク
申し訳ないほど無関係だけど、「闇の中を生きた」でふとカスパー・ハウザーのことを思い出したのでリンクを貼ってみた。
Wikipedia
x51の記事





関連記事

 Vol.7 「二百三高地」
 Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
 Vol.4 「戦場のピアニスト」
 Vol.3 「戦争のはらわた」
 Vol.2 「炎628」
 Vol.1 「西武戦線異状なし」
posted by n-o-b.net at 15:00| Comment(5) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
相変わらずよく色んなこと知ってるねえ。感心するよ。
なにげに1個も見たことないけど、Vol.2とVol.6は怖いもの見た差で借りてみようかなって気になったわ。
Posted by TAKE at 2008年04月09日 20:34
「ジョニ戦」って・・・確かにクオリティ高いですねゥ本にできるんじゃないですかィ
Posted by ユキ at 2008年04月10日 17:50
> TAKEさん
「炎628」は入手困難って書きましたが、意外にも近所のビデオ屋にはあっさり置いてました。「ジョニー〜」は有名なのでどこでもあると思われます。
ただセットで週末に観たら「暗い日曜日」になる勝算タカシくんですよ。

> ユキ さん
本?ブログ本ってこと?いや、飛ぶように売れないでしょ。
なお、携帯の絵文字を使うとPCでは□□に化けるので、「エロ本にできるんじゃ」に見えたよ。
どうでもいいけど最近のエロ本はDVD付きが当たり前みたいね。もはや本じゃないんだねえ、エロ本は。
Posted by n-o-b.net at 2008年04月11日 14:34
初めまして、 irohanikompeitow です。
生殖器を除いてほとんどの体の機能を失ってしまった主人公。
私は女ですが、男性はこの残酷さがいっそう身にしみるのかも知れません。
こんな姿で生きるくらいなら、見世物にしてくれ。
そうでなければ殺してくれ。そう叫ぶジョーの苦しみ、悲しみ。

軍人も医者も牧師すら彼を救ってやれない。
唯一理解してくれた看護婦さんはクビになってしまうし・・・
救いようのない、むごいラストでした。

それにしてもブログ主さんはなかなかに物知りな方なんですね。
お邪魔しました〜♪
Posted by irohanikompeitow at 2008年08月09日 13:59
> irohanikompeitow さん
コメントありがとうございました。
投稿名を拝見し、最初スパムコメントかと思いました。失礼しました。
すっごい前向きな姿勢で作ったすっごい後ろ向きな映画と「ジョニ戦」を形容しましたが、結局こういう映画が語り継がれて残っていくんですよね。
Posted by n-o-b.net at 2008年08月09日 16:57
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