英タイトル: Cross of Iron公開年: 1976年
製作: アメリカ
「ワイルドバンチ」で知られるサム・ペキンパー監督が第二次世界大戦の東部戦線をドイツ視点から描いた異色作。
リアルで丁寧な戦闘シーンの描写は後のアクション映画に大きな影響を与えた。ジェームズ・コバーンがとにかく渋い。
■ ストーリー
東部戦線、クリミア半島東隣のタマン半島クバン橋頭堡。着任したばかりの、プロシア貴族の家柄のシュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)は、自分と自分の家の名誉のために、鉄十字勲章に執着していた。そんな彼は、叩き上げの分隊長、シュタイナー伍長(ジェームス・コバーン)を煙たがり、戦いに徹するシュタイナーが昇格することすら疎ましく思うのだった。(Wikipediaママ引用)
Vol.2に続いて独ソ戦の話。「炎628」はソ連視点なので、比べてみるのも一興かと続けてみた。・・・が、あまりに作風が違いすぎて比べようがなかった。こちらは娯楽作なので遥かに楽に観れるだろう。
さて、本作について語る前に2つほど突っ込みを入れておきたい。
1. 邦題にカケラほどもセンスなし
「戦争のはらわた」 ― これだけ聞くとできの悪いスプラッター映画のようだが、全然そんなんじゃないから。原題の「Cross of Iron」もしくは「鉄十字章」では、ネオナチ映画ととられかねないと思ったからだろうか。
それにしても、なタイトルである。
これではゲリラと戦ってたはずが、いつの間にかエイリアンを相手にしていた某知事の映画のようだ。
2. ドイツ兵なのに全員英語
歴史モノではよくあることなので今更ではあるが、(Vol.1の「西部戦線〜」もそうだし)ジェームズ・コバーンがあの顔で英語をしゃべると、どうしてもドイツ人ってことを忘れてしまう。
加えて、例によってサム・ペキンパーの男・漢・オトコの演出だと、全員ヤンキースにしか見えない。
「そうだ彼らはドイツ兵なんだ、ドイツ兵なんだ」と度々自己暗示をかけるのが、果てしなく面倒。
なお、ナチス・ドイツ視点ということはビバ・ナチスなのか?といえば、全く逆でナチス上層部への批判がたっぷりとこめられている。("Bloody NAZI!"=「残酷なナチスめ!」って主人公の台詞もあるし)
ドイツ視点というより、主人公シュタイナー率いるドイツ兵小隊の視点と考えるとよいだろう。
一言で言えば、歴史考証にある程度目をつぶって観ると、非常に満足度の高い人間ドラマ。
■ 「戦争のはらわた」の背景
さて、今回はなぜヒトラー率いるナチス・ドイツが台頭し、再び血みどろの世界大戦へと突入していったのか?という重大な物語の背景を、学級紛争に例えてわかりやすく解説してみたいと思う。
【登場人物】
英夫(ひでお)くん・・・学級委員長
大仏(だいぶつ)くん・・・副委員長
米山(よねやま)くん・・・普段は孤独を好む弥七的存在
露口(つゆぐち)さん・・・家庭の事情が複雑
独歩(どっぽ)くん・・・委員長派と反目
伊東(いとう)さん・・・独歩派から委員長派に寝返る
日本(ひもと)くん・・・委員長派。みんなになめられている・1918年 第一次世界大戦終結
英夫くん、大仏くん率いる連合グループと、独歩くん率いる枢軸グループが大ゲンカ。結局独歩くんグループが降参する。
・1919年 ヴェルサイユ条約締結
独歩くんは陣地、植民地の没収、びっくり弁償金(彼の20年分のお小遣い)、武器の制限などを要求され、身ぐるみ剥がされる。
その話し合いを指揮るのは英夫くん、大仏くん、後からケンカに加わった米山くんの3人。露口さんは家が火事だと聞いて途中で帰ったので蚊帳の外。
一方、伊東さんや日本くんは連合グループで戦ったのに、ほとんど分け前をもらえずふてくされる。
・1919年〜1929年 ヴェルサイユ体制
この騒動の中、みんなにお金や物資を供給してがっちり稼いだ米山くんは一気にリーダー格になる。
英夫くんは鉄の生産は落ち込むは、米山くんに借金するはで、もはや委員長の威厳なし。
大仏くんは露口さんに貸したお金を返してもらうつもりが、親が離婚して苗字が曽蓮(ソレン)ちゃんに変わった彼女に「あたしもう露口じゃないもの」と拒否されびっくり。
この皺寄せが全て独歩くんにいき、2人は執拗に彼をいじめる。例えば大仏くんは炭鉱で独歩くんを働かせて、石炭は自分のものにするなどの仕打ちを加える。
かような状況の中、独歩くんは何もかもがいやになり、当然のごとくグレ始めた。
しかし、そんな緊張感の漂う中ではあるが、表面的には仲良し同盟を結成し、氷1枚の協調ムードを維持していた。
(言いだしっぺの米山くんは風車の弥七的ポジションを維持するため入らず)
・1929年 世界大恐慌勃発
でっぷりと肥えた米山くんは「永遠の繁栄」などと調子に乗っていた。しかも米山くんちの経営する農場は大豊作。
ところが、大豊作の結果、農作物の価格下落→農場のお友達、おまんま食い上げ→米山くんが作るクルマや家電が売れず、という状況に陥る。
そしてとある木曜日、ついに米山くんちの株が大暴落を始めた。
米山くんに頼っていたみんなは大慌て。あれえ?どこかで聞いたようなお話だね。
冷静だったのは自給自足していた曾蓮ちゃんだけ。
米山くん、英夫くん、大仏くんは自分の陣地や植民地の中でだけモノを売り買いする"鎖国"を始める。
ところが、植民地を持たない独歩くん、伊東さん、日本くんは困っちゃった。貧乏と空腹にさいなまされ、3人は段々と人格が変わっていく。
・1933年 アドルフ・ヒトラー内閣成立
すっかりスレてしまった独歩くんは「我こそが最も優秀な人種であり、クラスを統一して帝国を建設する!」と息巻いた。
この年、日本くん、独歩くんは相次いで仲良し同盟を脱退。
その後、独歩くんは「弁償金なんて払ってられるか!」と踏み倒しを宣言し、再び武器を揃え始める。
・1937年 日独伊三国防共協定
独歩くん、伊東さん、日本くんの持たざる3人はがっちりと手を組み、ここに2度目の紛争への布陣が完成した。
映画の内容とかけ離れてしまったが、以上が駆け足でみた一次大戦から二次大戦への道程。(受験生必読)
なお、最終的な対立の構図からソ連が外れているように見えるが、この当時共産主義化したソ連は「みんなの敵」だったことを付記しておく。
■ 見どころ
本作の見どころはなんと言っても緻密な戦闘シーンだろう。後のジョン・ウー、タランティーノ、ウォシャウスキー兄弟作品などに受け継がれるスローモーションやカット割りにご注目いただきたい。
それと、ペキンパー映画はとにかく男臭さが強調される。それは無言の友情であったり憧憬であったりするのだが、軽ーくホモダチ関係が描かれたシーンもあり「そういう方向もいっちゃう?ペキンパー」とドッキリ。
締めに映画でも引用されていた詩をここに転載しておこう。
Don't rejoice in his defeat, you men.
For though the world stood up and stopped the bastard,
The bitch that bore him is in heat again.
諸君、あの男の敗北を喜ぶな
世界は立ち上がり奴を阻止した
だが奴を生んだメス犬がまた発情している
ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトによる詩。ブレヒトは「第三帝国の恐怖と貧困」などを著した反ナチス作家であり、彼の著作はドイツ国内では発行禁止、焚書の対象であった。
「奴」とは独裁者ヒトラーのことを指しているわけだが、本作のテーマを端的に言い表している。
Vol.7 「二百三高地」
Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
Vol.4 「戦場のピアニスト」
Vol.2 「炎628」
Vol.1 「西武戦線異状なし」


まあブログ主がいいというのなら書いていっちゃいますが。
突っ込みいれてる部分は結構みんな思ってたりするところだと思うんです。『何この邦題?」みたいなやつ。R20も前は結構オイオイなんて言って憤ってたんですけど、最近はあんまり気にしてません。ネットで予告なんかを見てるせいか原題で覚えちゃってる場合が多いんですね。まあどうでもいいことですけど。
第一次大戦から第二次大戦までの流れは非常にわかりやすい!なんか某掲示板のや○夫シリーズを思い出してしまいました。
歴史の授業とかこんな風にやればわかりやすいんでしょうね。
なんか教えるのにもセンスが必要なんだなぁと思っちゃいました。
ふと気がついたんですが、vol.3にしてタイトルのところに戦争映画FALL IN!!乃文字がついてますね。vol.1とvol.2の時はなかったのになぁと思ってスクロールしてみるとあれ?ついてる。勘違いだったかなぁとも思ったんですが、もしやこっそゴホッゴホッ、にっこりと・・・。
学級紛争に例えるところが森藤さんらしい♪
でも本当に週2回更新するの??
これからも期待してまーす。
や○夫シリーズって何?
> HARUさん
コメントありがとうございます。
> 本当に週2回更新するの??
ですから「基本的に」です。そして俺は応用が好きです。