2008年03月17日

戦争映画 FALL IN!! Vol1. 「西部戦線異状なし」

西部戦線異状なし英タイトル: All Quiet on the Western Front
独タイトル: Im Westen nichts Neues
公開年: 1930年
製作: アメリカ


戦争映画を語るならば、やはり最初にこれを選ぶのが教科書的ではないだろうか。1930年公開、原点であり最高点であると誉れ高い反戦映画である。




ストーリー
舞台は第一次世界大戦下のドイツ。
戦争ムードを煽り、戦場へと若者を駆り立てる"有識者"。愛国心を持って武器を持った主人公ポールは、前線の凄惨な状況、戦友を失う悲しみ、恐怖、敵兵を殺す残酷さ、無意味さを知り、戦争に激しく疑問を持つ。しかし、休暇で帰った故郷の街では相も変わらず有識者が若者を鼓舞している。

「西部戦線〜」には、反戦映画に必要なエッセンスが凝縮されている。
第一次世界大戦のドイツ側の視点で描かれているが、普遍的なテーマを扱っているため、時代やイデオロギーに関係なく納得できる内容で万人にオススメできる。


「西部戦線異状なし」の背景
「世界大戦」と言うからには、世界を二分した大戦争というイメージが浮かぶが、そもそもはイギリス、フランス、ロシア × ドイツ(プロシア)、オーストリア、イタリアの植民地政策の対立にバルカン半島の民族問題が絡んだ、ヨーロッパ諸国による利害関係のもつれが火種であり、当初は欧州大戦(War in Europe)と呼ばれていた。

そして、争いの果てにドイツ(プロシア)帝国―ホーエンツォレルン家、オーストリア・ハンガリー帝国―ハプスブルク家、オスマン帝国―オスマン家、ロシア帝国―ロマノフ家の4つのヨーロッパ旧勢力の瓦解を招くことになる。


余談だが、一次大戦はイギリス女王ヴィクトリアの子孫とデンマーク王クリスチャン9世の子孫によって争われたという側面がある。主要国の統治者だけでこの通り↓

ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世・・・ヴィクトリアの孫。(妹のソフィアはクリスチャン9世の孫コンスタンティノス1世に嫁ぐ)
ロシア皇帝ニコライ2世・・・クリスチャン9世の孫。ヴィクトリアの孫、アレクサンドラと結婚。
イギリス国王ジョージ5世・・・ヴィクトリアの孫。同時にクリスチャン9世の孫。(ヴィクトリアの子エドワード7世とクリスチャン9世の娘アレクサンドラが結婚したから)
ギリシャ王コンスタンティノス1世・・・クリスチャン9世の孫。ヴィクトリアの孫、ソフィアと結婚。

その他、スペイン、ノルウェー、ルーマニア、デンマークの国王は全て彼らの子孫にあたる。
※詳しい家計図はこちらを参照(英文)


このように、ヨーロッパ諸国の"お家騒動"で始まった戦争は見境なく飛び火し、ある国は巻き込まれ、ある国は便乗し、戦線はアフリカ、アジアへと波及した。

例えば、アメリカ、日本も参戦しているが、アメリカはルシタニア号事件で世論を煽って終戦間際に参戦し、日本は日英同盟を理由に大陸進出を狙って主戦場とは遥かに離れた中国やシベリアに進軍した尻馬組。

※ルシタニア号事件以降、世論操作→参戦というスタイルはアメリカの"お家芸"になる。詳しくは別の回にて。


いくさの影には必ず商人あり
第一次大戦は飛行機・戦車・毒ガスなど、いわゆる"近代兵器"が本格的に実戦配備された初の戦争として知られる。
その裏では大量の兵器を扱うバジル・ザハロフ(Basil Zaharoff)のような武器商人が暗躍し、ドイツのクルップ社→兵器、アメリカのデュポン社→火薬など、現代まで続く軍需産業の礎が築かれた時期でもあった。

さらに、4つの帝国の瓦解を演出して莫大な富を得たと言われ、バルフォア宣言をして後のイスラエル建国を狙ったロスチャイルド家の存在も忘れてはならない。

戦争が起きると言うことは、多くの犠牲者の裏に必ず利益を得る人々がいるのが常である。映画で描かれている教師たち"有識者"は彼らの傀儡であり、象徴と考えることができる。

※バジル・ザハロフ:日本では知られていないが、ロシア生まれの武器商人として有名。敵味方関係なく武器を売って「死の商人」と呼ばれ、一説では第一次世界大戦を引き起こした張本人とも言われる。

※バルフォア宣言:イギリス三枚舌外交政策の1つで、アラブ人のパレスチナ居住を認めたフサイン・マクマホン協定、英仏露によるオスマン帝国の分割統治を決めたサイクス・ピコ協定と矛盾する。現代のパレスチナ問題はここに端を発する。



「西部戦線」について
物語の舞台となる西部戦線は現在のベルギー南部からフランス北東部に沿った一帯で、ドイツ軍とフランス軍が一進一退の攻防を繰り返したいわば最前線に当たる。

先ほど、近代兵器の使用について触れたが、長引く膠着状態と物量不足から、歩兵による近接戦闘がほとんどだったようだ。
映画の中でも、白兵戦に近い戦況が描写されており、塹壕に飛び込んでくる敵兵の姿にはリアルな恐怖を禁じえない。


― 開戦から4年、結果としてこの戦争をもって1,900万人という命が失われた。

途方もない人数である。

この途方もない犠牲者の中の1人の兵士が、1,900万分の1の命が、ある日西部戦線で失われたとしても、それはただ「異常なし」と打電されるだけの取るに足らないなことにすぎなかった。



78年前に作られたこの映画の関係者のうち、存命の方はごくごく限られるだろう。
もし今「西部戦線〜」が反戦映画の金字塔として君臨し続けていることを知れば、きっと喜ばしく感じるに違いない。

しかし、映画が公開されたのは1930年、前年には世界大恐慌が起き、9年後には第二次世界大戦へと突入する。彼らは同じ泥沼をたどる世界をどのような心境で見つめていたのだろうか。


最後に、個人的に好きなシーンを1つ選ぶと、いざ戦場に赴き、不安と空腹を味わうポールたち新兵に古参兵のカチンスキーが盗んできた豚を分け与えるシーン。殺伐とした物語の中でその飄々としたさまにほっとさせられる。




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posted by n-o-b.net at 15:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブログ開始当初、戦争映画について書くということも載せてあり、そしていつの間にやら戦争映画のカテゴリがなくなっていたのを少々残念に思っていたのですが、ようやく腰をお上げになったということで嬉しい限りです。
戦争映画について、というよりはその映画の背景について、という感じですが、なるほど。面白いアプローチですね。
その映画について「役者が云々、監督が云々、映像が云々・・・」と語るのももちろんありですが、こういった文章もまた実際に映画を見るのにいい手助けになるでしょう。
映画をどう見るか、または見てどう感じるか、はもちろん個々にゆだねられますが。
少々長くなりましたが最後に。戦争映画もいいですがいろいろな映画について書いてもらえると嬉しいです。
Posted by R20 at 2008年03月18日 13:25
> R20さん

コメント感謝です。
なんで戦争映画を選んだかと言えば、いきなり歴史のダークサイド"IKUSA"について触れると、右なり左なりの人と判断される気がしたので、フィルターとして映画を利用しようと思ったわけです。

で書いているうちに自分自身の戦争史観に辿り着ければいいかなあと思っています。

あくまで自分が今まで蓄積してきたデータベースが元なので、反駁が起きることも覚悟しています。

なので、何か違和感を感じたら是非本音でコメントをお願いします。
R20さんは"OTOKUI-SAMA"ですから。
Posted by n-o-b.net at 2008年03月18日 15:42
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