2008年03月29日

戦争映画 FALL IN!! Vol.4 「戦場のピアニスト」

戦場のピアニスト英タイトル: The Pianist
公開年: 2002年
製作: フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス合作


ご存知パルムドール受賞作。舞台は第二次大戦下のポーランド。天才的ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの命からがらな逃亡生活を、ゲットーでの実体験を持つロマン・ポランスキーが監督した大作。



ストーリー
1939年、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻。ワルシャワのラジオ局でピアノを弾いていたウワディスワフ・シュピルマンとその一家は、ユダヤ人に対するゲットーへの移住命令により、40年住み慣れた我が家をあとにする。ナチスの虐殺行為がエスカレートする中、ウワディスワフはカフェのピアノ弾きとして日々を過ごす。42年、シュピルマン一家は大勢のユダヤ人と共に収容所へ送られるが、ウワディスワフは警察の友人の手で一人収容所行きを免れた―。
(goo映画あらすじから抜粋)


個人的に試写会で1回、劇場で2回の計3回観賞した人生史上初の映画
弾きたくても弾けずエアーピアノで我慢するシュピルマン、助かったと思ったら間違ってソ連兵に殺されそうになるシュピルマン、視界の限り続く瓦礫の中で行き場もなく佇むシュピルマン。

すごくいい。とにかくいい。



毎度、エンドロール中に席を立つ観客に「頼むから最後まで座っててよ」と心中願った作品。

初めて最近作の紹介だが、未見の方がいたらむしろありがたい。
これから語る話を斜め読みしてから、それそれTSUTAYAへGO!

Vol.3の内容を踏まえているので、先にそちらを読まれることをお勧めする。


「戦場のピアニスト」の背景
「シンドラーのリスト」、「ライフ・イズ・ビューティフル」、「コルチャック先生」、「アンネの日記」、そして「戦場のピアニスト」と、ぱっと思いつくだけでもユダヤ人迫害に関する映画は山のようにある。

ではご存知だろうか?
ナチス・ドイツがユダヤ人のホロコーストを目論んだその理由を。

案外、明確な回答をできる人は少ないのではないかと思う。
例えばこんな回答が想定されるところだろうか。

「キリストを裏切ったユダがユダヤ人だったから」
→キリスト教 × ユダヤ教対立の原点として、蔑視を生む土台ではあったが、ホロコーストの直接的原因としては不十分。第一ナチスとキリスト教は関係ない。
「ヒトラーがユダヤ人を下等人種として宣伝したから」
→ナチスの言い分の1つだが、所詮は突飛な仮説。重要なのはなぜ民衆がこの誇大妄想的仮説を信じたかという動機の方。
「ヒトラーは自らに4分の1ユダヤの血が流れていることを呪ったから」
→そういう説もあるが、真偽はともかくヒトラーの個人的問題に過ぎず、民衆には関係ないこと。

多分、世界史の教科書でも理由については詳しく書いていなかったように思う。
しかし、その答えははっきりしている。

ヒトラーが図ったのは国際ユダヤ金融資本、さらに一言で言ってしまえば

ロスチャイルド家の殲滅である。


突っ込みもあるとは思うが、少なくともロスチャイルドが"金満ユダヤ人"の象徴となり、民衆がナチスに同調し迎合した理由はこれだ。


【ユダヤ人とは?】
まずはユダヤ人そのものの定義に言及する必要があるだろう。

ユダヤ人とはユダヤ教を信仰する人々、またユダヤ人の母から生まれた子のことを指す。

どちらかと言えば人種より宗教的な枠組みの方が強い。大雑把な話、日本人でもユダヤ人と結婚し、ユダヤ教に改宗すればユダヤ人になれる可能性がある。
(実際には異教徒との結婚は歓迎されない上、改宗しても厳しいテストがあるのでかなり難しい)


彼らの受難の歴史は旧約聖書の時代にまで遡る。その長い物語については割愛するが、2,500年前バビロン捕囚後に解放されたユダヤ人が離散し、多くのディアスポラ(離散者)が各地へと散っていった。

ディアスポラたちは移住先で「よそもの」として扱われ、ヨーロッパでは後にゲットーと呼ばれる居住区にしか住むことができず、職業も自由に選択することは許されなかった。
許されていた職業は、キリスト教の世界ではご法度だった金貸しや質屋(利息を取るから)、金の保管人、宝石細工師などの「あさましい」仕事だけ。


【ロスチャイルド家の誕生】
そんな中、18世紀中頃のドイツはフランクフルトに赤い盾の看板を掲げる1軒のユダヤ商店が誕生する。
店主は赤い盾Red shieldRothschildを屋号とし、マイヤー・アムシェル・ロスチャイルドと名乗った。

歴史上初めて登場する初代ロスチャイルドその人である。
以降、子々孫々に渡って雪だるま式に富を築き、教科書に残る事件のフィクサーとして、世界史に君臨する一族の物語が始まる。

マイヤー・アムシェルは古銭販売と両替商を生業とし、一握りの財産を手にした。
伝説では、今際の際に5人の息子を呼び、それぞれヨーロッパ諸国に渡り、根を下ろすことを命じたという。

ロスチャイルド5兄弟息子たちは父の遺言を忠実に守り、
長男:アムシェル・マイヤー → ドイツ、フランクフルト
次男:サロモン → オーストリア、ウィーン
三男:ネイサン → イギリス、ロンドン
四男:カール・マイヤー → イタリア、ナポリ
五男:ヤコブ(ジェームズ)・マイヤー → フランス、パリ
と離散し、"ディアスポラ"として土地土地でビジネスを展開する。

※写真上から時計回りにアムシェル、サロモン、カール、ヤコブ、ネイサン


最初に頭角を現したのは三男ネイサンだった。
彼は類まれなる相場士の才能を発揮し、わずか数年でロンドン・シティでその名を噂される存在となった。遂には、"英雄"ナポレオン最後の戦争、ワーテルローの戦い(1815年)で自作自演の仕手戦を仕掛け、たった2日で濡れ手で粟のボロ儲けをした。

5人兄弟は、ヨーロッパ中をネットワークし、それぞれの持つ情報をいち早く伝えあうことで、誰よりも早く相場の動きを察知することができたのだ。(ワーテルローの時、伝書鳩がドーバー海峡を渡った話は有名)
彼らは親族の絆を重んじて同族結婚を繰り返し、不動の血族を形成していった。


以下、ロスチャイルド家が介在したと断定できる事件の一部を列挙してみよう。

アヘン戦争(1840年)、セポイの反乱(1857年)、スエズ運河の買収(1875年)、
ボーア戦争(1880年)、日露戦争(1907年)、第一次世界大戦(1914年)、
ロシア革命(1917年)、世界大恐慌(1929年)、イスラエル建国(1946年)などなど。



ちなみに、現代の経済界でもロスチャイルド家の影ははっきりと確認することができる。以下、昨今のロスチャイルド系企業のほんの一例。

金融:ロスチャイルド銀行、ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ証券(ライブドア事件のフィクサー)、ソロモン・ブラザーズ証券(現在はシティ・グループ。平成バブル崩壊のフィクサー)、アメリカン・エクスプレス、モルガン・スタンレー、リップルウッド(旧長銀、新生銀行を買収→売却でがっぽり)
鉱業:アングロ・アメリカン(金銀銅など)、リオ・ティント(ウランなど鉱物)、デビアス(ダイヤ)
保険:ロイズ保険組合
穀物:穀物5大メジャーのうちコンティネンタル・グレイン、ブンゲ、ルイ・ドレフュスの3社
食品:ネッスル、ユニリーバ(リプトン、ブルックボンドなど)
石油:ロイヤル・ダッチ・シェル、ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)
ファッション:カルティエ、LVMH
酒・タバコ:LVMH、ギネス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ
レジャー:地中海クラブ(クラブメッド)、マンダリン・オリエンタルホテルグループ(アヘン貿易で儲けたジャーディン・マセソン系)
映画:ハリウッドメジャー・スタジオのうちMGM、20世紀フォックス、パラマウント、ワーナー・ブラザーズ、ユニバーサル



未だに世界の金・ダイヤの価格を決めているのはロスチャイルドだし、目下日本でも大騒ぎしているけど、石油による利権は対抗するロックフェラー系かロスチャイルド系が二分している。

他にもワイン好きであれば、知らぬ者はいないボルドーのラフィット・ロートシルト(Chateau Lafite Rothschild)、ムートン・ロートシルト(Chateau Mouton Rothschild)の2大シャトーはその名の示す通り、ロスチャイルド家のもの。


― 話がそれた。
時代を巻き戻すと、第一次大戦後、泥をなめる不況に喘でいたドイツ国内において、"金満ユダヤ人"に対するやっかみが起きるのは無理もない話であり、ナチス・ドイツはこの不満につけこんだのだ。
宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルス指揮の下、ナチスは巧妙に苦境の原因をロスチャイルドに負いかぶせた。

当時の大衆の心情を如実に反映した言葉を引用しよう。
「ヒトラーは言葉巧みに我々を扇動した。しかし、あいつが喋る言葉の中にいくつかの事実があったから誰もが飛びついてしまったのだ。」

ユダヤ人の風刺画
ナチスがポーランドで配った風刺画。キャプションは「ポーランドの本当の現実」みたいな意味。

ゲッベルスのプロパガンダはうまくいった。
結果、ドイツ国民の憎しみは燃え上がり、何百万人というユダヤ人は絶滅収容所へ送られ、ロスチャイルド家もオーストリア、フランス、同盟国イタリアと勢力を拡大したナチス・ドイツの前で息もたえだえの痛手をこうむった。

しかし、誤解を避けるために、ここではっきりと明言しておかなければならない。

確かにロスチャイルド家は莫大な財産を保有していた。
だからといって、迫害され虐殺された多くのユダヤ人もそうであったかといえば、それは事実と異なり、あるものは現地の生活に溶け込んで慎ましく暮らし、あるものは変わらずゲットーで糊口をしのいでいた。
つまりは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の心理であり、ほとんどは完全な"とばっちり"であった。シュピルマンもその被害者の1人ということになる。

いずれにしても、なんぼ恨みがましいとはいえ、武力によって財産を収奪することは狂信的暴力行為に他ならない。


以上、長くなったがホロコーストの裏にはこのような社会背景があった。

車椅子ごと窓から落とされたり、ドレミファ形式で処刑されたり、血も涙もない蛮行にドイツ兵を駆り立てた感情はこのように醸成されたのだ。

このことを念頭に置いて映画を鑑賞すると、また違った観点が生まれるのではないだろうか。


ポランスキーだからできたこと
監督のロマン・ポランスキーの壮絶な人生についても触れておこう。
彼はユダヤ人として生まれ、実際にゲットーで生活した経験を持ち、母親はナチスに殺されている。

彼の受難はここに始まるが、映画監督として成功しアメリカに渡ってからも妻の女優シャロン・テートをお腹の子もろともマンソン・ファミリーに惨殺される悲劇に遭う。

その後、精神崩壊をきたしたとも噂され、少女に対する性犯罪で告発されたのち、アメリカを逃げるように出国した。
ゆえに「戦場のピアニスト」でアカデミー監督賞を受賞するも、アメリカに入国することはできなかった。(逮捕されちゃうから)

ポランスキーは本作の監督に対するオファーを何度も断ったという。
無理もない話だ。しかし、結果として自らのトラウマをなぞり、この作品を世に送り出した執念に敬意を表したい。





参考文献
「赤い楯―ロスチャイルドの謎」 広瀬隆著 / 集英社刊
ロスチャイルドの歴史について詳しく知りたければ一読されるとよい。膨大なデータをよくぞここまで整理したものだと感心する。特に精密な家系図はすごい。でも、「それは正直苦しいっす」って感じる著者の無理矢理な推論も結構挟んでいるので、フラットな視点で読まれるよう注意されたし。



関連記事

 Vol.7 「二百三高地」
 Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
 Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
 Vol.3 「戦争のはらわた」
 Vol.2 「炎628」
 Vol.1 「西武戦線異状なし」
posted by n-o-b.net at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月23日

戦争映画 FALL IN!! Vol.3 「戦争のはらわた」

戦争のはらわた英タイトル: Cross of Iron
公開年: 1976年
製作: アメリカ


「ワイルドバンチ」で知られるサム・ペキンパー監督が第二次世界大戦の東部戦線をドイツ視点から描いた異色作。

リアルで丁寧な戦闘シーンの描写は後のアクション映画に大きな影響を与えた。ジェームズ・コバーンがとにかく渋い。


ストーリー
東部戦線、クリミア半島東隣のタマン半島クバン橋頭堡。着任したばかりの、プロシア貴族の家柄のシュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)は、自分と自分の家の名誉のために、鉄十字勲章に執着していた。そんな彼は、叩き上げの分隊長、シュタイナー伍長(ジェームス・コバーン)を煙たがり、戦いに徹するシュタイナーが昇格することすら疎ましく思うのだった。(Wikipediaママ引用)


Vol.2に続いて独ソ戦の話。「炎628」はソ連視点なので、比べてみるのも一興かと続けてみた。・・・が、あまりに作風が違いすぎて比べようがなかった。こちらは娯楽作なので遥かに楽に観れるだろう。


さて、本作について語る前に2つほど突っ込みを入れておきたい。

1. 邦題にカケラほどもセンスなし
「戦争のはらわた」 ― これだけ聞くとできの悪いスプラッター映画のようだが、全然そんなんじゃないから。原題の「Cross of Iron」もしくは「鉄十字章」では、ネオナチ映画ととられかねないと思ったからだろうか。
それにしても、なタイトルである。
これではゲリラと戦ってたはずが、いつの間にかエイリアンを相手にしていた某知事の映画のようだ。

2. ドイツ兵なのに全員英語
歴史モノではよくあることなので今更ではあるが、(Vol.1の「西部戦線〜」もそうだし)ジェームズ・コバーンがあの顔で英語をしゃべると、どうしてもドイツ人ってことを忘れてしまう。
加えて、例によってサム・ペキンパーの男・漢・オトコの演出だと、全員ヤンキースにしか見えない。
「そうだ彼らはドイツ兵なんだ、ドイツ兵なんだ」と度々自己暗示をかけるのが、果てしなく面倒。


なお、ナチス・ドイツ視点ということはビバ・ナチスなのか?といえば、全く逆でナチス上層部への批判がたっぷりとこめられている。("Bloody NAZI!"=「残酷なナチスめ!」って主人公の台詞もあるし)
ドイツ視点というより、主人公シュタイナー率いるドイツ兵小隊の視点と考えるとよいだろう。

一言で言えば、歴史考証にある程度目をつぶって観ると、非常に満足度の高い人間ドラマ。


「戦争のはらわた」の背景
さて、今回はなぜヒトラー率いるナチス・ドイツが台頭し、再び血みどろの世界大戦へと突入していったのか?という重大な物語の背景を、学級紛争に例えてわかりやすく解説してみたいと思う。

 【登場人物】
 UK 英夫(ひでお)くん・・・学級委員長
 France 大仏(だいぶつ)くん・・・副委員長
 USA 米山(よねやま)くん・・・普段は孤独を好む弥七的存在
 Soviet 露口(つゆぐち)さん・・・家庭の事情が複雑
 Germany 独歩(どっぽ)くん・・・委員長派と反目
 Italy 伊東(いとう)さん・・・独歩派から委員長派に寝返る
 Japan 日本(ひもと)くん・・・委員長派。みんなになめられている

・1918年 第一次世界大戦終結
英夫くん、大仏くん率いる連合グループと、独歩くん率いる枢軸グループが大ゲンカ。結局独歩くんグループが降参する。

・1919年 ヴェルサイユ条約締結
独歩くんは陣地、植民地の没収、びっくり弁償金(彼の20年分のお小遣い)、武器の制限などを要求され、身ぐるみ剥がされる。
その話し合いを指揮るのは英夫くん、大仏くん、後からケンカに加わった米山くんの3人。露口さんは家が火事だと聞いて途中で帰ったので蚊帳の外。
一方、伊東さんや日本くんは連合グループで戦ったのに、ほとんど分け前をもらえずふてくされる。

・1919年〜1929年 ヴェルサイユ体制
この騒動の中、みんなにお金や物資を供給してがっちり稼いだ米山くんは一気にリーダー格になる。
英夫くんは鉄の生産は落ち込むは、米山くんに借金するはで、もはや委員長の威厳なし。
大仏くんは露口さんに貸したお金を返してもらうつもりが、親が離婚して苗字が曽蓮(ソレン)ちゃんに変わった彼女に「あたしもう露口じゃないもの」と拒否されびっくり。

この皺寄せが全て独歩くんにいき、2人は執拗に彼をいじめる。例えば大仏くんは炭鉱で独歩くんを働かせて、石炭は自分のものにするなどの仕打ちを加える。

かような状況の中、独歩くんは何もかもがいやになり、当然のごとくグレ始めた

しかし、そんな緊張感の漂う中ではあるが、表面的には仲良し同盟を結成し、氷1枚の協調ムードを維持していた。
(言いだしっぺの米山くんは風車の弥七的ポジションを維持するため入らず)

・1929年 世界大恐慌勃発
でっぷりと肥えた米山くんは「永遠の繁栄」などと調子に乗っていた。しかも米山くんちの経営する農場は大豊作。

ところが、大豊作の結果、農作物の価格下落農場のお友達、おまんま食い上げ米山くんが作るクルマや家電が売れず、という状況に陥る。

そしてとある木曜日、ついに米山くんちの株が大暴落を始めた。

米山くんに頼っていたみんなは大慌て。あれえ?どこかで聞いたようなお話だね。

冷静だったのは自給自足していた曾蓮ちゃんだけ。
米山くん、英夫くん、大仏くんは自分の陣地や植民地の中でだけモノを売り買いする"鎖国"を始める。

ところが、植民地を持たない独歩くん、伊東さん、日本くんは困っちゃった。貧乏と空腹にさいなまされ、3人は段々と人格が変わっていく。

・1933年 アドルフ・ヒトラー内閣成立
すっかりスレてしまった独歩くんは「我こそが最も優秀な人種であり、クラスを統一して帝国を建設する!」と息巻いた。
この年、日本くん、独歩くんは相次いで仲良し同盟を脱退。

その後、独歩くんは「弁償金なんて払ってられるか!」と踏み倒しを宣言し、再び武器を揃え始める。

・1937年 日独伊三国防共協定
独歩くん、伊東さん、日本くんの持たざる3人はがっちりと手を組み、ここに2度目の紛争への布陣が完成した。


映画の内容とかけ離れてしまったが、以上が駆け足でみた一次大戦から二次大戦への道程。(受験生必読)
なお、最終的な対立の構図からソ連が外れているように見えるが、この当時共産主義化したソ連は「みんなの敵」だったことを付記しておく。


見どころ
本作の見どころはなんと言っても緻密な戦闘シーンだろう。後のジョン・ウー、タランティーノ、ウォシャウスキー兄弟作品などに受け継がれるスローモーションやカット割りにご注目いただきたい。

それと、ペキンパー映画はとにかく男臭さが強調される。それは無言の友情であったり憧憬であったりするのだが、軽ーくホモダチ関係が描かれたシーンもあり「そういう方向もいっちゃう?ペキンパー」とドッキリ。


締めに映画でも引用されていた詩をここに転載しておこう。

Don't rejoice in his defeat, you men.
For though the world stood up and stopped the bastard,
The bitch that bore him is in heat again.


諸君、あの男の敗北を喜ぶな
世界は立ち上がり奴を阻止した
だが奴を生んだメス犬がまた発情している


ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトによる詩。ブレヒトは「第三帝国の恐怖と貧困」などを著した反ナチス作家であり、彼の著作はドイツ国内では発行禁止、焚書の対象であった。

「奴」とは独裁者ヒトラーのことを指しているわけだが、本作のテーマを端的に言い表している。




関連記事

 Vol.7 「二百三高地」
 Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
 Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
 Vol.4 「戦場のピアニスト」
 Vol.2 「炎628」
 Vol.1 「西武戦線異状なし」
posted by n-o-b.net at 15:00| Comment(3) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月20日

戦争映画 FALL IN!! Vol.2 「炎628」

炎628英タイトル: Come and See
露タイトル: Idi i smotri
公開年: 1985年
製作: ソ連


第二次大戦時に現在のベラルーシ(当時ソ連領)で起きたドイツ軍による虐殺の模様を描いた一作。
←のパケ写を見れば想像がつく通り、Vol.2にしてかなり上級者向けの内容で、容赦ない非人道的シーンが続くため、ご覧になるならそれなりに覚悟を持って臨むことをお勧めする。


ストーリー
ベラルーシの少年、フローリャは砂地から一挺のライフルを掘り出す。何気ないその行動が、その後未曾有の恐怖と戦慄を少年に与えることになるとは、その時は知る由もない ― 。

のっけから陰鬱なムードで始まる本作だが、少年がパルチザンに取り残され、家に帰った辺りから正視に堪えないシーンが続く。


重ねて、スナック感覚で観賞すると
エラい目に遭うので要注意。



「炎628」の背景
邦題の「炎628」とは、ナチスドイツによってソ連の628の村が焼き尽くされたことに由来する。
実は、第二次世界大戦による犠牲者の数はソ連が圧倒的に多く、2,000万人と断トツである。
参考リンク
(ソ連の犠牲者が多い理由については別回で)

それでは、「ドイツは残虐な加害者」「ソ連は可哀想な被害者」なのかと考えると、それは余りにも一面的過ぎであり、ソビエトが行った非道行為も枚挙に暇がない。


・ポグロム
ポグロム=ロシア語で「破壊」の意。19世紀から20世紀初頭にかけてロシアを中心に起こったユダヤ人迫害・虐殺の総称。犠牲者の数は5万人とも10万人とも言われる。ロシア革命以前なのでソ連ではないが、反ユダヤ主義は革命後も引き継がれる。

・カティンの森の虐殺
1940年、ベラルーシから50km程西に位置するスモレンスク近郊カティンの森で起きた、ソ連兵によるポーランド人捕虜25,000人の虐殺事件
昨年、アンジェイ・ワイダ監督によって映画化された。
「Katyn」(日本未公開)

・バルト三国における虐殺
エストニア、ラトビア、リトアニアの三国では、1940年開戦直後、独ソ間の勝手な協定でソ連に併合されるやいなや、政治家、軍人の大量処刑が始まる。続いて、13万人以上の市民が生還率の低いシベリアの強制キャンプへと送られた。
(ちなみに日本人外交官、杉原千畝がリトアニアで6,000人のユダヤ人にビザを発給したのはこの頃。)
それゆえ、ナチスドイツがバルト三国入りした時は解放軍として迎えられたそうだが、蓋を開けるとすぐにユダヤ狩り、ジプシー狩り、赤狩りが始まる。

・対日参戦
極東において、ソ連は終戦間際の1945年8月11日、一方的に日ソ中立条約を破棄し日本に宣戦布告する。8月14日、日本は既にポツダム宣言受諾を連合国に通達していたが、8月16日に南樺太、8月18日に千島列島に侵攻。戦後の東西分割を見越して東の足場とすることを目論んだ。
さらに満州にいた何十万人という日本人はシベリアへと抑留された。
そして、どういうわけか60数年が過ぎ、ソ連が崩壊した現在も千島列島=北方領土はロシア領のまま。


そもそも、映画の舞台ベラルーシは"当時"ソ連領だったにすぎず、この国は実に幾度にも渡って他国に翻弄された歴史を持つ。

20世紀初頭だけでみても以下の通り。
ロシア帝国領ドイツとソ連の分割統治ベラルーシ人民共和国独立(ドイツ占領下)
白ロシア・ソビエト社会主義共和国(ソ連が接収)リトアニアと統合ポーランドが侵攻
ポーランド領とソ連領に東西分割

なんとここまでが1918年から1922年のたった4年間の歩み。

さらに二次大戦の幕開けにより、ソ連領ドイツ軍占領ソ連領とキャッチボール状態が続く。

いずれにしてもたまったものではないのは住民たちで、頭の上で勝手に政治屋や軍人が決めた決め事に従い、今日は赤旗、明日はハーケンクロイツと振り回され、蹂躙される憂き目に遭ったわけだ。


なお、映画が作られた1985年に目を向けて見ると、丁度ゴルバチョフの手でペレストロイカが始まった頃。
その後、自由化の気運が高まり、バルト三国、ウクライナ、ベラルーシが独立してソ連邦が崩壊するのは、その6年後の1991年のことである。

この映画はソ連視点で描かれているので、一見すればドイツ→悪という構図だが、独立した今ベラルーシ視点で作り直せばドイツもソ連も悪の枢軸として描かれるに違いない。


観賞ポイント
この映画、観る者をなんとも禍々しい気持ちにさせてくれるのだが、その理由の1つとして以下2つの撮影方法が目立って使われている。

1. ステディカムでの撮影
走る少年を追うシーン、避難した村人の間を縫うシーン、などステディカムが多用されている。
映画「シャイニング」で与えた効果と同じように、人の目線の高さ、歩行速度で被写体を追ったり、主人公自身の目線になったりすることで、自分が物語の中に引き込まれたような錯覚を覚える。

2. 異常に多いカメラ目線
作中、常軌を逸する頻度でカメラ目線が使われる。これも作品世界へ視聴者を引き込むことを狙ってのことだと思うが、それにしても多い。訴えかける目、見下した目、怯える目と色々あるが、余りに見据えられるので思わず視線を外したくなるほどだ。


最後に、気になるシーンを2つ挙げると、1つは終盤にドイツ軍がパルチザンにとっつかまる場面。え?いつの間にという展開で一瞬状況が飲み込めなかった。

もう1つは、オーラスで主人公がある人物の写真に向かって何度も何度も発砲するシーンがあるのだが、この少年の表情が本気で怖い。
ぱっと見中学生くらいかと思われるのだが、憎悪に歪んだその顔は30歳にも50歳に見えた。一体、どんな演出をしたらこんな顔になるのだろう?と不思議に思った。

本作、大きなレンタル屋でないと置いていないかもしれないが、甘っちょろいヒューマンドラマに辟易としている方は、探し出してでも観る価値があることを保証する。






関連記事

 Vol.7 「二百三高地」
 Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
 Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
 Vol.4 「戦場のピアニスト」
 Vol.3 「戦争のはらわた」
 Vol.1 「西武戦線異状なし」
タグ:炎628
posted by n-o-b.net at 15:00| Comment(4) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月17日

戦争映画 FALL IN!! Vol1. 「西部戦線異状なし」

西部戦線異状なし英タイトル: All Quiet on the Western Front
独タイトル: Im Westen nichts Neues
公開年: 1930年
製作: アメリカ


戦争映画を語るならば、やはり最初にこれを選ぶのが教科書的ではないだろうか。1930年公開、原点であり最高点であると誉れ高い反戦映画である。




ストーリー
舞台は第一次世界大戦下のドイツ。
戦争ムードを煽り、戦場へと若者を駆り立てる"有識者"。愛国心を持って武器を持った主人公ポールは、前線の凄惨な状況、戦友を失う悲しみ、恐怖、敵兵を殺す残酷さ、無意味さを知り、戦争に激しく疑問を持つ。しかし、休暇で帰った故郷の街では相も変わらず有識者が若者を鼓舞している。

「西部戦線〜」には、反戦映画に必要なエッセンスが凝縮されている。
第一次世界大戦のドイツ側の視点で描かれているが、普遍的なテーマを扱っているため、時代やイデオロギーに関係なく納得できる内容で万人にオススメできる。


「西部戦線異状なし」の背景
「世界大戦」と言うからには、世界を二分した大戦争というイメージが浮かぶが、そもそもはイギリス、フランス、ロシア × ドイツ(プロシア)、オーストリア、イタリアの植民地政策の対立にバルカン半島の民族問題が絡んだ、ヨーロッパ諸国による利害関係のもつれが火種であり、当初は欧州大戦(War in Europe)と呼ばれていた。

そして、争いの果てにドイツ(プロシア)帝国―ホーエンツォレルン家、オーストリア・ハンガリー帝国―ハプスブルク家、オスマン帝国―オスマン家、ロシア帝国―ロマノフ家の4つのヨーロッパ旧勢力の瓦解を招くことになる。


余談だが、一次大戦はイギリス女王ヴィクトリアの子孫とデンマーク王クリスチャン9世の子孫によって争われたという側面がある。主要国の統治者だけでこの通り↓

ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世・・・ヴィクトリアの孫。(妹のソフィアはクリスチャン9世の孫コンスタンティノス1世に嫁ぐ)
ロシア皇帝ニコライ2世・・・クリスチャン9世の孫。ヴィクトリアの孫、アレクサンドラと結婚。
イギリス国王ジョージ5世・・・ヴィクトリアの孫。同時にクリスチャン9世の孫。(ヴィクトリアの子エドワード7世とクリスチャン9世の娘アレクサンドラが結婚したから)
ギリシャ王コンスタンティノス1世・・・クリスチャン9世の孫。ヴィクトリアの孫、ソフィアと結婚。

その他、スペイン、ノルウェー、ルーマニア、デンマークの国王は全て彼らの子孫にあたる。
※詳しい家計図はこちらを参照(英文)


このように、ヨーロッパ諸国の"お家騒動"で始まった戦争は見境なく飛び火し、ある国は巻き込まれ、ある国は便乗し、戦線はアフリカ、アジアへと波及した。

例えば、アメリカ、日本も参戦しているが、アメリカはルシタニア号事件で世論を煽って終戦間際に参戦し、日本は日英同盟を理由に大陸進出を狙って主戦場とは遥かに離れた中国やシベリアに進軍した尻馬組。

※ルシタニア号事件以降、世論操作→参戦というスタイルはアメリカの"お家芸"になる。詳しくは別の回にて。


いくさの影には必ず商人あり
第一次大戦は飛行機・戦車・毒ガスなど、いわゆる"近代兵器"が本格的に実戦配備された初の戦争として知られる。
その裏では大量の兵器を扱うバジル・ザハロフ(Basil Zaharoff)のような武器商人が暗躍し、ドイツのクルップ社→兵器、アメリカのデュポン社→火薬など、現代まで続く軍需産業の礎が築かれた時期でもあった。

さらに、4つの帝国の瓦解を演出して莫大な富を得たと言われ、バルフォア宣言をして後のイスラエル建国を狙ったロスチャイルド家の存在も忘れてはならない。

戦争が起きると言うことは、多くの犠牲者の裏に必ず利益を得る人々がいるのが常である。映画で描かれている教師たち"有識者"は彼らの傀儡であり、象徴と考えることができる。

※バジル・ザハロフ:日本では知られていないが、ロシア生まれの武器商人として有名。敵味方関係なく武器を売って「死の商人」と呼ばれ、一説では第一次世界大戦を引き起こした張本人とも言われる。

※バルフォア宣言:イギリス三枚舌外交政策の1つで、アラブ人のパレスチナ居住を認めたフサイン・マクマホン協定、英仏露によるオスマン帝国の分割統治を決めたサイクス・ピコ協定と矛盾する。現代のパレスチナ問題はここに端を発する。



「西部戦線」について
物語の舞台となる西部戦線は現在のベルギー南部からフランス北東部に沿った一帯で、ドイツ軍とフランス軍が一進一退の攻防を繰り返したいわば最前線に当たる。

先ほど、近代兵器の使用について触れたが、長引く膠着状態と物量不足から、歩兵による近接戦闘がほとんどだったようだ。
映画の中でも、白兵戦に近い戦況が描写されており、塹壕に飛び込んでくる敵兵の姿にはリアルな恐怖を禁じえない。


― 開戦から4年、結果としてこの戦争をもって1,900万人という命が失われた。

途方もない人数である。

この途方もない犠牲者の中の1人の兵士が、1,900万分の1の命が、ある日西部戦線で失われたとしても、それはただ「異常なし」と打電されるだけの取るに足らないなことにすぎなかった。



78年前に作られたこの映画の関係者のうち、存命の方はごくごく限られるだろう。
もし今「西部戦線〜」が反戦映画の金字塔として君臨し続けていることを知れば、きっと喜ばしく感じるに違いない。

しかし、映画が公開されたのは1930年、前年には世界大恐慌が起き、9年後には第二次世界大戦へと突入する。彼らは同じ泥沼をたどる世界をどのような心境で見つめていたのだろうか。


最後に、個人的に好きなシーンを1つ選ぶと、いざ戦場に赴き、不安と空腹を味わうポールたち新兵に古参兵のカチンスキーが盗んできた豚を分け与えるシーン。殺伐とした物語の中でその飄々としたさまにほっとさせられる。




関連記事

 Vol.7 「二百三高地」
 Vol.6 「ジョニーは戦場へ行った」
 Vol.5 「ヒトラー 〜最後の12日間〜」
 Vol.4 「戦場のピアニスト」
 Vol.3 「戦争のはらわた」
 Vol.2 「炎628」
posted by n-o-b.net at 15:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月16日

戦争映画 FALL IN!! Vol.0

ざっと1月ぶりの更新になる。

丁度いい機会なので、思い切って以前からずっと書こうと思っていた戦争映画についてしばらく綴ってみようと思う。

実はブログ開設時から戦争映画に関することをまとめようと思っていたのだが、ブログの方向性があまりにも瑣末になりすぎ、ともすれば不謹慎になる気がしたため自重していた。

また、イデオロギー同士の争いである「戦争」を描いた映画は、多くの場合どちらか一方のイデオロギーに偏りがちである。そこにさらに自分のフィルターを通すわけだから客観性を欠くことは避けがたい。

つまり、1つの戦争映画を評価することは「敵」として描かれた国や集団への偏見を招きやすい。

なので、無責任なことは書けないので、頭にはあってもそれを文章に起こすのはちょっとしたチャレンジだった。

しかし、気にするほどの人気ブログでもあるまいし、ひとまずは見切り発車で書き始めてみて、後は方向修正していくことに決定。


ここで最初に自戒の意味もこめて、以下編集方針を記しておきたい。

一、映画そのものの評価よりもいかに史実を伝える資料となっているかを重視。

一、映画を軸にそこに描かれる時代背景や社会情勢、戦争に至った理由などを書き添え、鑑賞に役立つ知識をひけらかす紹介する。

一、前述の通り、敵側の描写について偏見を招くことも多いため、可能な範囲で反対サイドのリンクや著書も掲載。

一、リアリティはなるべく追求したいが、銃火器や軍服の考証についてはその限りではない。(そもそも知識なし)

一、誤りを見つけたら、勇気を出してこっそり修正。

一、説明不足を補うために、Wikipediaをメインに引用リンクを貼るが、あくまで参考であり、それらが情報ソースとして信用に足るわけではない。

一、基本的にネタバレ禁止。

一、基本的に週二ペースで更新。



ということで、次回はVol.1。「西部戦線異状なし」を取り上げるおつもり。


※ちなみにタイトルの"FALL IN!!"とは軍隊用語で「集合!」の意。適当に決めたので、変える可能性大。
posted by n-o-b.net at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 戦争映画 FALL IN!! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする